第18章 記憶
『では、少しだけ我儘を言ってもよろしいでしょうか?』
仁「なんじゃ?」
窓から視線を外して、俺の目を必死に覗いて来る
『クス、昔の私が知りたいです。仁王君の知っている範囲で良いですので、多くの事を教えてください』
仁「どんなのがええんじゃ?」
『なんでも良いです。何時も見る所から、珍しい所まで全てです』
仁「そんなんでええんか」
『はい、今はなんでも知りたいです。あなたが隠している暗い過去でもいいので』
仁「!」
コイツ、俺の目を見ただけでわかったんか
あの日の事件の事を
『どんな「通り魔」でも、此処までやったら普通は殺すはずです。相手の顔を見ているかもしれないのでね』
仁「お前さん...」
『「通り魔」でない事は検診中に知りました。看護師さんから聞いた話です。大量出血の事も聞きました。残りは推測です』
仁「......」
『隠し事は最初の方にわかりました。初めて仁王君を見た時に言った言葉で何かあるのがわかっていました』
仁「俺も墓穴を掘ったかのう」
『ウフフ、傷は順調に塞がっているそうです。もうしばらくすれば動き回れるようになると忍足先生がおっしゃっていました』
仁「そうか」
俺は氷月の頭を撫でる
『仁王君がしてくれるこの動作が好きです。なんだか此処に居る気になれます。あれ?なんか変な事を言いました、ごめんなさい』
微笑んでくれたかと思ったらシュンと小さくなる
仁「大丈夫じゃ、此処には俺も居るしお前さんも居るぜよ」
『はい』
甘酸っぱいやり取りをして居ると先生が邪魔しにきよった
勝ち誇ったような笑みを浮かべてやってくる辺り
大体の話しを聞かれておったんじゃな
先生のくせにたちが悪いのう
その後、面会時間ギリギリまで話をして家に戻った
何時ものように過ごせば、氷月の部屋に入る
じゃけど、俺の中の胸騒ぎが大きくなる一方じゃ
収まる所か溢れて居るようじゃ
次の日になり氷月の病室に行く途中
病院内に入った瞬間に嫌な予感が通り過ぎた
足早にエレベーターに向かい、それに乗って病室に入った
見たところ何処にも変わった様子はなかった
『あ、お早いですね』
仁「まあな」
氷月の既に起きて居った
『?、また眠なかったのですか?』
仁「そんなに酷い顔でもしとるか?」