第17章 彼女
窓から視線を外して声のした方を見る
綺麗な銀髪が最初に目に入った
その後全体を見ると、暗い黄色に身を包んでいた
ほのかに香る香水は何処か知っているような気がした
?「氷月」
もう一度呼ばれればその声は聴いた事があるとわかった
だが、顔を見ても思い出せないしわからなかった
先程言われた通りに首を横に振れば
目の前の人物は苦い顔をして口を開く
?「氷月、もう終わったんじゃ。お前さんは白川氷月じゃ」
意味深な事を言う、また忍足先生とは違った方言を使う銀髪さん
その意味がわからない、そして何処かで会った事があるかもしれない
『あの』
?「?」
銀髪さんは不思議そうな表情をした
『どちら様ですか?』
?「ッ!」
銀髪さんの表情は強張り、苦しそうな顔をする
?「お前さん、まさか」
?「記憶喪失だよ」
扉から忍足先生がやってくると
銀髪さんに向かって言った
父「先生...」
父親も苦しい表情をしながら母親は涙をハンカチで拭いていた
自分が記憶喪失だと初めて知った
忍「脳が何かに対して強く拒絶をしておるんや。恐らくだが君の話した最後の部分に、朝倉が何かをしたんやと思う」
忍足先生が何を言っているかわからない
だけど、「朝倉」と言う単語も知っており
なんだか怖いような感じがした
『銀髪さん?』
仁「仁王雅治じゃ」
この人が「雅治」って言う人なんだ
顔も整っているし、声も良い
『?仁王、君?何処かであった事があるのですか?』
仁王君はまるで私の事を知っているような口ぶりだ
そこが気になってしまう
に「ッ!...まあ、な。お前さんと通っとる学校のクラスメイトじゃ」
『そうなんですか』
クラスメイトだったら知っているだろう
1人で納得する
何不自由なく両目で仁王君を見ると
先程の母親のように泣きそうな顔をする
記憶喪失、私の中の記憶が全て消えてしまった
ふとした事で戻るかもしれないと忍足先生が言えば
瞳の奥で炎が灯ったような視線を私に突き付けた
仁「また来るな」
頭をポンと撫でられて、仁王一家が帰って行った
その後ろ姿は寂しいものだった
看護婦さんが濡れたタオルで体を拭いてくれて
スッキリした上体でベットに入り込む
何度も寝たの自然と瞼は落ちていった