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ゲームはお好き?

第17章 彼女


忍「無理せんでも...」

『大丈夫です』

苦しそうに言う先生の言葉を遮り、味噌汁の具の豆腐を口に入れた

柔らかく舌で潰せるしっとりした食感

初めて食べたとまではいかないが懐かしい感触である

程度に潰した豆腐を食道へ運ぶ

ゆっくりとそこを通るのがわかり、少しだけ不愉快になってしまう

無事に胃まで運び込めば静寂が現れた

外ではカラスが泣いており、夕日が地面に入り込もうとしていた

忍「......」

忍足先生の顔を見れば、驚いた表情をしており

私はそれの意味がわからなかったので首を傾げた

そうすると忍足先生は表情を崩して、柔らかく微笑んでくれた

忍「美味しかったか?」

『はい』

味を知らない、忘れた私に美味い不味いがわからない

だけど食べている時に嫌な気分にならなかったから

この味は嫌いではないので「不味い」分野に入らないだろう

その後も味噌汁の具をいくつか突いた後

もう食べられなくなり、忍足先生がお茶を進めた

暗い茶色の液体は私にとって苦かったが、それでも全て飲み込んだ

忍足先生がプレートを持って外に出るとすぐに帰ってきた

白衣のポケットから薬が渡され、母親が買ってきてくれた

天然水をコップに注ぐ

包みから5個くらいの錠剤と2つのカプセルを口に放り込み

コップに入れた天然水で体の奥へと流し込む

一段落した先生は母親が来るまで横になっているといいと言ったので

私はその言葉に甘えて横になった

不思議と眠気が襲ってくれば、自然と瞼が閉じられた

目を明ければ少し薄暗い部屋になっており上体を起こして窓を見る

夕日が地面に半分ほど沈んでいると扉がノックされた

部屋の電気を点けて入ってきたのは母親で隣の椅子に座る

母「これから雅治が来るからね。それでもわからなかったら首を横に振って頂戴ね」

椅子から立ち上がり窓辺まで行くと、ハンカチで口元を押さえ声を殺して泣き出した

何がなんだかわからないまま時計を見ると

秒針が6を通り過ぎた

5分くらいして扉がノックされずに勢いよく開いた

それよりも星が出てきている、月が出てきている空が気になった

隣の椅子が軋む音を立てれば誰かがそこに座っているのがわかる

?「氷月」

誰かに優しく呼ばれた

その声に聞き覚えがあり、懐かしさが体の底から溢れてくる
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