• テキストサイズ

ゲームはお好き?

第14章 6つ目


実「これで理解出来たかしら?あなたから奪ったものが」

『それじゃ、私は...?』

酷く掠れた声だった

それは後ろにいる皆にも届き、前にいるアイツらにも届いた

実「君は偽物。本物は此処」

実里は自身に手を当てて丁寧に言った

『違う...本物は、私。私の、ハズ』

無意識に一歩後ろに下がる

私の思っている事、考えている事が間違っていなければ

私は存在してはならないのだから

汐「賢すぎるのも苦しいね」

汐音は笑う、不適に笑う、狂喜に顔を歪ませる

『私は、私は...』

私は本物、記憶も、感情も

一歩ずつ下がる

自分自身が信じられなくなり、自分自身を抱きしめる

アイツらを見たまま下がる、下がる

恐怖なんて物が押し寄せてくる

だけどそれは恐怖だけではない

仁「氷月...」

『!』

背中に何かが当たり、何かが私の体を捕らえた

心臓の鼓動は速さを増していく、小さく荒い息遣いが自身を焦らせている

『違う...、違う...』

違う、私は私、アイツは私?

では私は、誰?

実「賢いからあなたの事が好きだったのよ。愚か者」

苦しい、寒い、怖い、助けて...

桃「テメー、黙って聞いてりゃ...」

大「桃、押さえるんだ」

海「けど...」

乾「海堂、此処は冷静さを返したら取り返しがつかない」

切「て事は、氷月先輩が4つ目に奪われた物は「傷跡」なんすか?」

丸「て事じゃねーのか?」

違う、私が奪われたのは「傷跡」なんかじゃない!

でも、言えない

幸「氷月、わかったんだね。奪われたもの」

『!』

精市に隣から声を掛けられてビクッと大きく体が反応する

そこから震えだし、足が笑い出す

いつの間にか床からは赤い液体が消えており

いつもの廊下の床が表れていた

誠「お前は「亡霊」さ。生きてなんかいない。死んでるんだよ」

ぼう、れい

仁「!、お前さん、まさか...」

雅治が何かに気づいて声を掛けてくるが

その言葉を現実で聞きたくなかった

自身を抱いている手を耳に持っていけばいいのに

私の脳からの命令を無視して、手はそのまま自身を抱き続ける

達「俺が奪ったのは右目」

汐「私が奪ったのは食欲」

誠「俺が奪ったのは家族と親戚」

実「私が奪ったのは...」

心臓がドクリと嫌な音を立てた
/ 321ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp