第12章 4つ目
『精神科のカウンセラー、朝倉恵子。私がこの世で一番嫌いな人間』
静かに紡ぎだされる言葉
放心状態になっているため
自分が辛い事なんて当の昔に超えている
『催眠医療によってあの日の事をなんかも強制的に見せられた』
水島「えっ!」
『週に3回現れて、何があったのか聞くために。自分の思い出した事全部を話しても信じて貰えず、記憶を強制的に思い出させて喋らせる』
なんて事をっ!
最も辛かった記憶も無理やり思い出させて
一度ならず何度もっ!ふざけるんじゃないっ!
それでその人物を見ただけであれだけ怯えていたのか
『強制的に思い出された記憶を話しても信じて貰えず、結果が出るまでやらされた。約2月くらい』
不「!」
中学の話を移動中に簡潔に話された
不二さんが初めて会いに行った時も2ヶ月後って言ってたから
『結果が出ない事にイライラした上は、彼女の未熟さが故に出来ない事だと判断され、別の病院に移り変わった』
氷月の表情はまるで死んでいる
目も心なしか前よりも濁っているように見える
目の前に現れた人物の情報を入れないように曇っているみたい
水島「氷月、泣いてもいいんだよ?辛かったんでしょ?苦しかったんでしょ?いいんだよ?もういいんだよ?」
氷月が壊れないように優しく包む
『......』
もう半分くらい壊れてしまったのか
氷月は何も反応を示さない
早く此処から出ないといけない
早く氷月を
じゃないと、帰って来なくなっちゃうから
真「お前は生きている、まだ希望を捨てるには早いぞ」
柳「弦一郎の言う通りだ。お前が死んでいたら俺達はお前と話す事はなかっただろう」
柳生「そうですよ氷月さん。あなたは死んでなんかいません」
ジャ「此処で諦めたら何もかも手放すんだぞ」
丸「お前はなんでも抱え込むからな」
切「頼ってくださいッス。氷月先輩」
幸「俺達は諦めないよ?氷月も俺達も蒼学も誰1人掛ける事無く此処から出るんだ」
仁「俺達との約束を破るつもりか?言っておくが、俺達はお前さんを裏切らん。絶対じゃき」
『...うん』
返事を返しても氷月の言葉に色がなかった
先程までの優しい剣は何処かへ行ってしまった