第2章 走りはじめる
1年ぶりの後輩も相変わらずで、それでもこの青葉城西で新しいチームとして出来上がっていく雰囲気を肌で感じた。もちろん全く知らない子もいるし、おかげさまで前より部活が楽しくなりそうだ。
俺の毎日は充実している。
ちょっと早まったかな、と思った。部活に夢中になりすぎて、前の彼女にはフラれた。暇つぶしに男女交際を行えるほど暇じゃなかった。
(なまえは、どういうタイプなんだろう。まぁ飛雄に惚れてたくらいだから、他の子よりはバレーに理解があるんだろうな)
「…ねえねえ、金田一」
「なんですか、及川さん」
「飛雄とマネージャーのなまえちゃんって、何かあった?」
「ああ、あの幼馴染の…。いや別に…。最後のほうは、話もしてなかったですよ」
「ふうん」
結局気になって、練習おわりに探ってしまった。
飛雄の王様ぶりに愛想をつかしたのかな。そんな感じでも、なかったけど。俺は、中学の体育館を思い出す。マネージャーとしてひどく有能だった彼女を。でも、試合中はひとりだけを目で追っていた。部活のあとだって、ふたりで帰っているのを何度か見つけた。あのバレーバカは、彼女の気持ちに気づいていなかったと思うけど。
「あ!」
「ど、どうしたんですか」
「電話番号…聞くの忘れた」
走りはじめる
(20150629)