第11章 ぶつかってはじけた
金田一とは中学時代のチームメイトだ。
今は青城にいて、さっきまで飛雄と因縁の対決をしていた。特別親しくはなかったが、飛雄に反感をもつメンバーの筆頭だったことを覚えている。そうか、飛雄だけじゃない。ほかの皆も、それぞれ前を向いて歩きだしているのか。なんで私だけ、後ろ向きな後悔ばかりしてたんだろう。
「ありがとう」
「おう」と、飛雄がうなづく。
私は自分の感情から逃げすぎていたようだ。たった1、2分のこんな会話で、あっさり救われることなのに。
これでいいや。
これで十分。昔みたいな関係にはもう戻れないかもしれないけど、もうここまでで構わない。胸のつかえがすっと取れたような気分だ。
「ところで、なんでこんなところにいるの?迷子?」
「いや、及川さんが…」
「及川さん…?」
「お前が今日ここに来てるって、教えてくれたんだよ。それで、探してた」
意外な人物の名前が出てきて、私は思わず口を開けてしまった。絶対に来い、無機質な文字で書かれたあのメール。まさか、及川さんが引き合わせてくれたとは。
あの人も大概お人好しだ。
あの胡散臭い笑顔と同時に、私はまだ飛雄に伝えていないことがあると思い出した。せっかくお膳立てしてもらってここまででいいなんて言ったら、あの人に笑われてしまいそうだ。
「あ、影山ー!お前、何してんだよ。探したぞー」
「菅原さん、すいません。わりぃ、なまえ、もう戻る」
「!あ、待った、飛雄」
先輩らしき同じジャージを着た人が、柱の影から顔を出した。
慌てて飛雄のジャージの裾を掴む。伝えなくては。ずっとずっと、言いたかったことがあるんだから。
「私、ずっと好きだった」
ぶつかってはじけた
(20180816)