第1章 きみを見つけた
なまえが、やっと俺のことを見た。
まん丸のビー玉みたいな目だ。綺麗な顔立ちをしているよな、と思う。特別可愛いってわけじゃないけど、その凛とした立ち振る舞いのせいか、目立つ。存在感のある子だ。そんな子が、ちょっとだけ動揺をみせた。
「飛雄とは小学校が一緒で仲良かったけど、別に付き合ってたわけじゃないです。及川さんと岩本さんみたいなもんです」
「あの、岩ちゃんは、その、岩泉さんね。」
「どっちでもいいでしょう」
「よくないよ!先輩だからね一応!」
やっぱりご機嫌を損ねてしまったようで、プイとそっぽを向かれた。ふーん、あっそう。付き合ってないのは知ってたよ。やっぱりこの子の、片思いだったのか。
そう、俺は知ってる。
彼女はずっと飛雄を見てた。時々応援にきてくれる女の子たちはみんな俺を見てたけど、この子はちがった。飛雄しか、見てなかったんだよ。
「もういいですか?私、戻りますよ」
「あ、待って。…あのさ、」
彼女は遠慮なく怪訝そうな顔をした。俺は、この瞬間良からぬことを思いついてしまった。この子が欲しいな、なんて。もともと気に食わなかったのだ。俺より飛雄のことを好きだったこの子が、俺のものになったら気持ちいいかもしれない。
そんな、好奇心に似た、最低のことを俺は考えた。
「俺と、付き合おうよ。」
きみを見つけた
(20150628)