第10章 ラストチャンスを願う
どうでもいい話だった。
俺はこんなどうでもいい話のためにチャリを走らせたのか。
衝動的に飛び出した我が家へ帰る途中、また自転車を漕ぐ気にもならず治りかけの足をズルズルと引っ張って歩いた。自動販売機の光に点々と照らされる道。タイヤのまわる音だけが虚しく響いた。
もしかして、俺ってフラれた?
なんとも納得のいかない気持ちがふつふつと沸いてくる。なまえは全部わかっていた。俺が遊び半分で声をかけたことも。そりゃあそうか。あれで不審に思わないほうがどうかしてる。わかった上で、ちゃんと向き合ってくれていたのだ。
「…電話なんかしなきゃよかった」
思わず漏らした言葉には何の意味もない。
俺は、何に対してこんな苛々してるんだ。彼女が飛雄を好きなのはわかってたことじゃないか。大体俺が想像していた通りの中学時代だったようだし、意外なことは何もなかった。
大体、あいつ、なんであんなあっさり別れようなんて言うんだ。それは俺が言うはずだったのだ。もっと仲良くなって、なまえが俺を好きになったら。
……なまえが、俺を、