第9章 サヨナラの手をふる
私と飛雄のこと、といってもそんな長いエピソードがあるわけではない。
ただ単に私が飛雄を好きで、ずっと片思いをしていたというだけの話である。中学に入ったときには、もうはっきり自覚してた。どうしようもなく目で追ってた。興味なんてまるでなかったバレー部に入部してた。でも幼馴染という良いポジションに居座り、恋人になりたいなんていう気持ちはあまりなかった。あのバレーバカが色恋沙汰に目覚めることもなさそうだったし、まぁそれに関してはお互い様だけど。
それで、みてた。
飛雄がだんだん、窮屈な部活動の中で堕ちていくのを、ただみてた。
「コート上の王様」
そんな異名までついて。
決して飛雄が悪いわけではないし、チームメイトのみんなだって悪くない。誰も悪くない。なんで、歯車が噛み合わないのか。どうしたらいいのか。私はわからなかった。わからなくて、ただみてた。