第5章 一歩ずつ進む
お昼休みもなんとなく朝の険悪ムードをひきずったまま。お互いに譲り合い精神がないもんだから、目も合わさずにご飯を食べた。
そういえば俺、女の子とケンカするなんて初めてかも。なかなかレアな経験だ。いい加減仏頂面もあきてきて、おそるおそるなまえの顔を見ると相変わらずの無表情でおにぎりを食べていた。…わからない。一体何を考えているのか。
しかし放課後、部活終わりに彼女から初めてメールがきていた。
「……お、おお……」
むしゃくしゃした気持ちで自主練に励んだあと、誰もいない部室で携帯を触ると1件のメール受信通知。なまえだ。初めて俺の返信ではないメールがきた。
思わず声をもらしてしまった。
驚くべきはその内容である。
『 お疲れさまです。今日委員会があって、遅くまで残ってます。部活おわったら、一緒に帰りましょう 』
何度も文面を読み返す。間違いない。彼女から俺宛てのものだ。信じられるだろうか。あのなまえが、歩み寄っているじゃないか。慌てて時計をみると、もう7時を過ぎている。今日は岩ちゃん達も先に帰ってしまったので、ひとりでやりすぎた。やばい。せっかくお誘いを受けたのに、ずいぶん待たせてしまっている。
こうなるともう、帰ったんじゃないか?という考えが浮かんだ。あの子のことだから、返信なかったのでとか言いながらしらっと帰宅してそうだ。とはいえ、無視はできず。俺はカバンをひっつかみ、もう片方の手で電話した。
「!…あ、もしもし!なまえ?」
「はい」という声が二重に聞こえた。不思議に思いつつ、体育館の扉を開ける。すると、扉の前にちょこんとなまえが座り込んでいた。