第5章 一歩ずつ進む
「もうやめよっかな」
「何を?」
「なまえ攻略計画」
やっと戻ってきた自分の教室でうなだれると、岩ちゃんが心底呆れた顔をした。ああ、どうでもいいと思ってるんだろうな。俺だって最早どうでもいい。飛雄もなまえも、どうでもいい。むしろあのふたりは似たもの同士でお似合いだと思うよ。
「ならさっさと別れろよ。可哀想だろ、相手が」
「!?ちがぁう、俺が可哀想なんだよっ」
「うるせえ、でかい声だすな」
「このまま別れるのも悔しい…」
大体俺より飛雄に惚れてたような変人に挑戦するのが無謀だったのかもしれない。隙がなさすぎる。付き合ってるとはいえ、俺のことを1ミリだって考えてくれてないだろう。フラれるくらいならフってやりたい。でも、やっぱりこのまま引き下がるのも悔しいし。
「うーん、俺のこと好きになってもらってからフるつもりだったのに」
「クズ川め」
「彼女いないからってひがまないでよ、岩ちゃん」
岩ちゃんに机の足を蹴られながら、俺は考えに耽る。やっぱり彼女は、まだ飛雄のことが好きなのだろうか。そもそも飛雄の前ではもっと、笑ったり素直になったりするのだろうか。
普通の女の子みたいに。
「……どうでもいい」
「あ?」
「どうでもいいから!そんなこと!」
わ、と頭を抱える。なまえに振り回される俺はとても滑稽である。振り回されて、たまるもんか。うん、最後に思いきりひどいフり方をするのも有りだ。あいつが泣いちゃうくらい。それで大好きな幼馴染にすがってしまえばいいのだ。飛雄は、怒るだろうか。
(…どうでも、いい…)
あいつ、どんな顔して泣くんだろう。