第5章 一歩ずつ進む
「あ、及川先輩!」
「きゃあ、今日も来てる〜」
ほら、これが俺の大好きな女の子の声。
これだ、これだ。黄色い声と華やかな香りにつられて、振り向く(きもち男前な顔で)。するとスカート丈を短く詰めて、ニコニコ笑った子たちが上目遣いで俺を見つめていた。
「最近、なまえちゃんのところによくきてますよね〜」
「いやー、このクラスは可愛い子多いから、俺すきなんだよ」
「えー嬉しいー!」
同じように笑顔を返すと、名前も知らない女の子が鈴を鳴らしたような声で笑った。意識的になまえに見せつけていた。ほおら、及川さんはモテるんだからね。お前はこんなハイスペックな男と付き合ってるんだよ!
少しは妬けただろうかと横目で彼女を見やったが、そこにはもう誰もいなかった。