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【HQ】及川徹は恋をする

第4章 目に焼きついた







「なまえですか?職員室に行くって言ってましたよ」

「なまえか。音楽準備室まで資料を運んでもらってるよ」

「なまえ?来てすぐ、戻りましたよ」





あいつ、どんだけウロウロしてんだよ!
また岩ちゃんに怒られるじゃんか!


放課後、俺はなまえを求めてたらい回しにされていた。いい加減にしてほしい。連絡がつかないなら、ちょっとはじっとしていてくれ。そんな無茶なことまで思ってしまう。こうなったら意地である。絶対に今日、この携帯を渡してやる。




決心を固めたとき、ふと今朝のチームメイトの台詞を思い出した。確かに、…最初からわかってたけど俺のタイプではないよな。今まであんなのと付き合ったことはない。いつも俺が選ぶのは、容姿が良くて俺に優しくて甘え上手な女の子。あんなに俺に厳しくて一切甘えてくれない子は、初めてだ。


あの子には腹が立ってばかりだ。
大体飛雄しか見てないところが気に食わなかったし、実際に付き合っても俺のことなんか見てくれていない。今だってこんなに探し回ってる俺のことをちっとも考えてなんかないんだろう。ああ、本当に腹が立つ。屈辱的だ。






「あー、大キライだ」

「何がです?」

「!」





ぱっと後ろを振り向くと、なまえが目の前に立っていた。
相変わらず飄々とした様子で、俺のことを見つめている。廊下のど真ん中。教室に戻る途中だったのだろう。なんとか出会えた俺は、心底安堵した。





「なまえちゃん、よかった!俺すごい探しちゃったよ」

「すいません、日直の仕事が忙しくて。なにか用でした?」

「用だった!これ!」




右手にずっと握りしめていた携帯を差し出すと、なまえはきょとんとして目をまん丸にした。それから俺の手からそれを受け取ると、慣れない手つきで携帯に触れた。あれ、そんな大きいサイズを買ったんだっけ。彼女の手におさまったそれは、俺の手にあったときよりも大きく見えた。







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