第3章 笑って蓋をする
俺と彼女で取り決めをした。
お昼休みは一緒に過ごすこと。部活のない日は一緒に帰ること。朝練がない日は一緒に登校すること。
こんな取り決めをわざわざしたのは初めてだ。中学生かよ。それでも彼女は至って真面目に復唱していたが、ふと思いついたように顔を上げた。
「付き合うって、結構めんどうですね」
「やめて!めんどうとか言わないで!普通はさ、一緒にいたいって思うのは当たり前なんだから!」
「え、」
「え?」
「及川さんは、私と一緒にいたいんですか?」
「い、!?」
俺の真の目的は、おまえを惚れさせて飛雄に嫌がらせするためだから。いたいわけじゃない。おまえなんかと、一緒にいたいわけじゃない。
それだけなのに、あまりにストレートな物言いに俺はたじろいでしまった。
「そりゃあ…好きだから、ね。」
「そうですか」
変なの。
こんなのまるで、俺がおまえに振り回されているみたいじゃんか。
笑って蓋をする
(20150629)