• テキストサイズ

《繰繰れ!コックリさん》24時間養えますか?

第1章 出会いは春の風と共に。


満面の笑みが返ってきた。
先ほど、信楽に握られていた手を
力いっぱい拭いていたのと同じ娘とは思えない。

「そっかー。そんなに喜んでもらえて
俺も嬉しいなぁ。
ほらほら、どんどん食え食え!」

褒められて嬉しそうなコックリさんによって
さらにてんこ盛りになっていく料理の数々。


「あんなくらいで幸せになれるとは…
普段はどんな粗食を食べているやら。」

言いつつ食べる狗神。

「…やっぱり、カプめんの屋台はないです。」

カップ麺に全てを捧げた少女、こひなも
なんだかんだ言いつつ箸はすすむ。

「お前らも、素直に美味しいって言えよなー。」

ぷりぷりしながらも、ちゃんと全員に
盛り付けてあげるお母さんったら、優しい。

(めそめそ。)

あ、コックリさんが泣いている。

そんなコックリさんはいつもの通りスルーされつつ

「…で。お嬢ちゃん、腹が膨れたら、
ちったぁ悩みも減ったんじゃねーか?」

ただひたすらお酒を傾けるだけだった信楽が、
不意に桜香へと、言葉を投げかけた。

「え……。」

「ま、何があったか聞こうとは思わねェが
折角の可愛い顔が台無しだったからな。」

ニッ、と笑いかければ、娘の意表をつかれたような
表情が目に入る。

「そんくらいの年になれば、色々あらぁな。
とりあえず、今日くらいは呑んで食って笑って
嫌な事は忘れちまおうぜ。
…まっ、おじさんはいつでも飲んでるけどな☆」

意味なく入ったキメ顔に、思わず桜香が噴出した。

「それ、ただの飲んだくれじゃないですか。」

「まー、間違ってるとは言わねーなぁ。」

呆れ交じりに、でもくすくす笑い続ける娘を
先ほどと同じように嬉しそうに見つめる信楽と

「信楽おじさんのナンパがうまくいっているように
見えるのです。」

「…珍しいこともあるものですね。」

「俺、外に洗濯干してきたんだけど…ヤバイかなー。」

置いてきぼりの三人であった。
/ 14ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp