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《繰繰れ!コックリさん》24時間養えますか?

第1章 出会いは春の風と共に。


みんなで手を合わせて食べようとしたところで
漸く気が付いた。

「……いつまで手を握っているんですか。」

そう。
信楽は、ずーっと手を握ったままだったのである。
まあ、それに気が付かない娘も娘であるが。

「やー、握り心地が良くってなー。」

はっはっは、とごまかす信楽。
しかし、手は、離さない。

「いい加減離してください!」

信楽の手を振り払うようにして手を振れば
あっさりと離され

「忘れるところだった。
ちゃんとお手拭きで手を拭いてから食べるんだぞー」

お母さんは準備万端です。
娘の元にもウェットティッシュが回ってきて

「あんたも…って、そう言えば、名前教えてもらえないか?
ずっとあんたって言ってるのも何だか居心地が悪いしな。」

「…桜香です。橘 桜香。」

コックリさんの問いに、手をごしごしと力いっぱい
拭きながら答える娘改め桜香。

「へぇ、桜香ちゃんか。やっぱり名前も可愛いねぇ。」

ヘラヘラするエロ狸。すでに飲んだくれです。
…いや、いつもか。
そんなヘラヘラ狸からの視線をスルーして
お皿とお箸を構える桜香はすでに臨戦態勢。

「人に聞いといて名乗らないのも失礼だよな。
俺の隣がこひな。その隣のが狗神。
で、あんたの隣の変態が信楽。俺がコックリさんだ。
よろしく、桜香」

ニッコリ笑うコックリさんへと、一瞬不思議そうな
表情を向けるも、桜香はニッコリ笑顔を返し

「こちらこそ…じゃあ、改めていただきます!」

皿に盛りつけられていた料理へと箸を伸ばし

(ぱくっ。)

一口。

「………。」

無言で目を閉じ、ただただ、幸せそうな表情を
浮かべる桜香。
言葉はいらぬ。表情を見れば、どれだけ
美味しいかがよく分かった。

「美味いか?」

そんな彼女の隣で、嬉しそうにその様子を見ていた
信楽が問えば

「もう、美味しいなんてもんじゃないです!
この卵焼き、なんて優しいんでしょう。
だし巻き、って言うんですよね、こういうの。
ああ、もう、上手く言えないですけど、幸せです。」

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