• テキストサイズ

《繰繰れ!コックリさん》24時間養えますか?

第1章 出会いは春の風と共に。


そして翌日。
朝からたたき起こされた信楽は
ゴザと徳利を手に教えられた公園へとやってきた。

「へぇ、こりゃまた風流だな。」

先日は綻んでいる程度だった桜だが
今は7分咲きといった所か。
丁度見頃を迎えていた。

辺りを見渡せば、同じように場所取りに来たのか
奥さんに叩き出されました、といった風情の親父や
新人の洗礼受けてます、という感じの青年、
また、もうすっかり始めてます、
出来上がってます、という感じの
学生っぽい集団などもちらほら見受けられる。

「どこにすっかなー。」

言いながら、うろうろ。
良い桜とともに、また別の「花」も探す視線。
と、

「お。」

目がとまったのは、一本の桜の木の下で
わざわざ持ち込んだのか、折りたたみ椅子に腰かけ
一人で桜を眺めている娘だった。

年は、先ほど盛り上がっていた集団と
さほど変わらないであろう感じだ。
落ち着いた茶色の長いストレートの髪を
高い位置でポニーテールにし、
ややマニッシュな服装。
そんな娘が、缶ジュースを手に、ぼーっと
何かを眺めていた。
場所柄、桜を眺めているのだろう、と思うのだが
何かを見るわけでもなく眺めているような、
矛盾しているがそんな印象を受けたのだった。

「お嬢さん。どうかしたかい?
何なら、ちょっとおじさんとお茶でもどう?」

ニッ、と笑いながら、いつもの調子で声をかける信楽。

「えっ…あ…え、っと…?」

娘は声をかけられると、ハッとし、
飛んでいた意識が戻ってきたかのような
鈍い反応を最初は返していたが

「……どちら様ですか?」

次の瞬間には、いつでも信楽を通報できる
態勢になっていた。

「酷いなー。そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。
おじさん、どっからどう見ても怪しくないぞ☆」

キラッ☆とウィンクを飛ばしてみる。
次の瞬間

「もしもし、警察ですか。不審者が…」

通報された。

「わー!わー!おじさん、ほんっとに怪しくないって!
ちょっと君が可愛くて心配だったから
声をかけてみただけで!」

娘は、慌てる信楽を一瞥し

「………。すみません、ただのナンパだったみたいです。
はい、ごめんなさい。大丈夫です。
もし何かあったら、またお電話させていただきます。」

ピッ、と携帯を切ると大きな、大きな、
ほんとに大きなため息をついて、
残念な人を見る目で信楽を見た。
/ 14ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp