第1章 ただいま、池袋
「セーラー服カマーン!!」
「うるさい。」
人生ではじめて着るブレザーは少し体に合わなくて。
まぁ着ていれば慣れるんだろうけれど。
来良学園の制服を翻しながら私はそう叫んでいた。
案の定、椿からつっこまれるが。
椿と私は残念ながら同じクラスにはなれなかったが、毎日一緒に帰っている。
「私のクラスの学級委員なんか衝撃的な名前と胸の大きい杏里ちゃんっていう可愛いいいい女の子なんだよ!?」
「杏里ちゃんは覚えてて衝撃的な名前は覚えてないのね…」
仕方ないじゃないか。
可愛い女の子は正義なんだ。
「って…あれ紀田くんだ」
「紀田くん?誰それ」
ふと椿が足を止め、とある場所を見つめていたので視線の先をたどってみると。
「名前が衝撃的な子だ!!」
明るい茶髪の男子と、我らがA組の学級委員…名前は忘れたけど…が何やら路地裏を覗き混んでいるようだ。
「どうしたのかな?エロいビデオでも落ちてたかな?」
「あんたは黙ってろ」
椿は特に気にしていないようでそのまま通りすぎようとした。
私も健全な男子高校生なら仕方ないかと思いつつ歩くことを再開したのだが――
彼らに近づく人影に気づき…私は直感した。
7年経ち大人っぽくなってはいるが、性格の悪さが滲み出ているような笑みを浮かべた眉目秀麗という言葉がよく似合う顔立ち。
そして――――
「やぁ。」
まるで、青空から降ってきたような。
そんな声を聞いた瞬間、直感は確信へと変わった。
「臨也、さん…」