第1章 1
それから数日を経て無事赤司ら新入生は入学を終え、晴れて洛山高校の生徒となった。言わずもがな、赤司は新入生代表として挨拶をしていたので入学したばかりだというのに既に校内では知らない者はいないほどの有名人となっている。容姿が一番の要因であり、それだけで射止めた女性は多いだろう。中学時代の実績を知っている教師勢からの信頼も厚い。幸先のいいスタートをすることになった赤司は難なくバスケ部主将を任されることになり、初めての参加にも関わらず自分が仕切る羽目になった。スカウトの声に乗っかった身だ、レギュラー入りは間違いないだろうと予測していたが入学前から主将の地位が決まっているなどと誰が思うのか。いずれ勝ち取る予定だった立場だ、苦労せずに手に入るのならば貰ってしまおうと笑んだ赤司はまず面通しを行った。全部員を相手にしていたら日が暮れる、レギュラーメンバーと主だったマネージャーだけに絞り後は資料から目通しすることに決めた赤司の目の前に並んだのは新キャプテンに召集された過去無冠の五将と呼ばれていた強者たち。自分より一つだけ年上で名の知れた彼らを赤司が知らないわけがなかった。中学時代に一戦交えた者もいるはずだ。実力を知っているのは何も赤司に限ったことではない。また彼らも、キセキの世代を束ねていた赤司を見知っている。知っているからこそ、今日を待ち侘びていた。
「赤司征十郎だ、今からお前達の主将となる」
挨拶はその一言に終わった。知っているだろう、とは言わなかったが代わりに色の異なる瞳に宿したのは無論勝利の二文字。自分が率いるからには勝ち進む道しか許さない。言外に含んで短すぎる紹介を終えると、一つとは言え年上には変わりないであろうに上から見下ろすような態度を取って見せた赤司に対し嫌悪はなかった。不思議なものだ、彼が上に立つべき者だと本能が理解しているようだと喉を鳴らして一歩列より前へ歩み出たのは男にしては少し長めの黒髪を流した、格好良いというよりは綺麗といった面持ちの青年。
「実渕玲央よ。監督から副主将を任されたわ」
よろしく、と言って調子よく片目を瞑ってみせた男は今後赤司をサポートする身だ。