第1章 1
それも悪くない、と悪戯心が首を擡げるが今は平常心を保とうと耐える。
「見ていれば分かることだよ」
言えばとうとう首まで赤くした彼女はやはり可愛らしい。女性とはこんなにも可愛い存在なのだと知った赤司にこそ、みょうじだからだと教えてやりたいものである。
「告白なんて、出来ないよ…」
恥ずかしくて、と続けた彼女は傍にいるだけでいいのだと言う。殊勝なことだとは思うが、赤司にはそれでいいとは思えなかった。しかし、と返す言葉は同意を示すものであった。
「俺でよければ話を聞こうか」
一人で溜め込むのは辛いだろう。言った後で、何を、と後悔するものの音にした今既に遅く。いいの、と輝いた目を寄越したみょうじは期待に満ちている。今まで一人で内に秘めてきたのだ、溜まったものは多いだろうと容易に想像出来るが、それをどうして自分が受け入れると言ってしまったのか。赤司にしては珍しい、稀に見ない失態である。
まぁ、いいと静かに息を吐き出した赤司が笑顔を向けた。彼女と過ごす時間はなんであれ苦ではない、共に過ごせるのであれば今でさえ荒んだ心を癒してくれているのだから更に和ませてくれるだろうと思い直す。みょうじと同じく、ただ傍にいたいだけなのだと知らずに過ごせる時間が増すのだと歓喜した赤司の笑みは美しい。勿論、と笑った赤司に微笑んだみょうじのなんと愛しいことか。
「ありがとう、赤司くん」
名前を呼んだ彼女が至極嬉しそうに笑う。それだけで愚かしい行為も許せる気が赤司もまた微笑み返した。
to be continue...