第10章 目
自分では身長が足りないため、赤司に持っていた赤色のガラス玉を渡すと彼はそれをくぼんでいた目へと当てはめたのだった。
がたりと隣に飾ってあった絵が下に落ちてきていた。
どうやら額縁の裏になにか書いてあるらしい
“大きな木の後ろに・・・”
「大きな木ってどこかあったっけ・・・」
赤「いや今のところ見てないね、一旦元に戻ろうか」
赤司の言葉に頷いて元来た道をもどっていると、今先ほどまでなかったはずのドアが存在していたのだった。
二人は慎重に部屋の中へ入るとそこには展示物が置いてあったのだ。
ちかちかと電気がついたり、消えたりする恐怖にイヴは赤司の手をぎゅうと握りしめていた
「『ワインソファ』・・・?
大きなワイングラスが 斜めにカットされて 中に赤いクッションが 入っている・・・」
赤「座り心地はよくなさそうだな」
「次は・・・征君・・・」
赤「『憂鬱』だよ。
イヴには難しかったか」
読めずにいた漢字を赤司は代わりに読んであげていた。
ゆううつ、ゆううつと何回も唱えるようにして漢字を覚えようとする少女に赤司は頭を撫でていた。
イヴは目線を一度そちらに向け、奥に木があるのを見つけた。
しかしその前にあったものに気がつくと、赤司の服をつかんで見えないようにしていた
赤「『パズル』ね・・・」
そのパズルは色々な色で塗られたガイコツだったのだ。
頭は赤色、胴体は青、足は黄色に手は黒色。
ニセモノにしてはずいぶんと手の込んだ作品であった。
イヴにその作品を見せないようにしながら先へと進むと、木のオブジェがあった。
『感情』。
人の形にも見える作品に、あ、とイヴが声をあげた
「大きな木の後ろに・・・!」
赤司の手を離して後ろへ回り込んでみると、銀色に光る結婚指輪を発見したのだ。
「あった!征君、いこ!」
イヴは先へと走ってあの指輪をはめようとした。
本当に心優しい少女だと、そう思った。
人のためにあそこまで必死になるのだ。
ゆっくりと歩きながら彼女を追いかけた。
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