第9章 ヤキモチ
「シェリーが居なくなっただと!?」
バン、と大きな音をたて机を叩いた紅炎は、鬼の形相で怒鳴った。
「は、はい。今朝、侍女がシェリー様のお部屋に来たときにはもう居なかったそうです…」
使用人は、びくびくと肩を震わせながら話した。
そのことに紅炎は怒りを切らしたのか、
「すぐに探索へ出させろ!!絶対に見つけ出せ!!…何があってもだ!!!」
ありったけの声をだし、使用人に命令した。
使用人は逃げるように部屋から出た。
「……シェリー…」
椅子に座って、手を額に乗せ深く目を閉じた。
カランカラン、と心地の良い音がして、ドアが開かれる。
それを合図に、「いらっしゃいませー」と、明るい声が聞こえる。
どれも、聞き覚えのある懐かしいものだ。
「すみません、ちょっといいですか?」
「はい?なんでしょう……か…」
私が通りかかった店員を引き止めると、その店員は私を見て大きく目を見開いた。
「…え………シェリー?」
「うん。」
シェリー、という言葉が店内に響き渡り、店内にいたすべての人間がこちらを振り返った。
「……ぅ、うううぅぅ……」
すると、私の目の前にいる店員は、急に下を向いて顔を手で覆い呻きだした。
「ちょ、ちょっと…?」
「うぅ………シェリー、シェリー…!!!」
店員はバッと顔を上げ、勢いよく私に抱きついてきた。
幸い、相手は女性だったため、なんとか抱きとめることができた。
「う…ひっく……ぐすっ…」
私の肩が徐々に濡れていく。
だが、そんなことはどうでもよかった。
なにより、私のことを覚えていてくれたのが嬉しくて。
「……ごめんね…」
彼女の腕の中で、私は静かに泣いた。