第5章 コイバナ
その背中を見るとなんだか胸が苦しくなって、反射的に呼び止めた。
…ん?
"胸が苦しくなって"?
…??
あれ、どうしてこんなこと思うのだろうか。
「…?どうか、しましたか?」
「え、あ…いや、なんでもありませんであります……」
変な発言をした、と心の中で頭を抱えた。
絶対変な奴だと思われた、と思いながら上を向くと、案の定シェリーさんの笑った顔がそこにはあった。
「…くすくすっ…ふふ、面白い言葉を使いますね、夏黄文さんは」
口に手を当てて可笑しそうに笑う彼女は、柔らかい雰囲気を持っていて、とても愛くるしい笑顔だった。
それにつられて私も笑ってしまった。
「あ、やっと笑った!」
「え?」
彼女は胸の前で手を合わせて目を輝かせた。
「夏黄文さん、さっきから浮かない顔していましたよ?でも、やっと笑ってくれましたね!よかった」
満面の笑みで話すシェリーさんを見て、また、心の中が暖かくなる。
そして同時に、顔が赤くなったような気がした。
「…?夏黄文さん?どうしました?」
「っ!あ、いえ…なんでもありません。引き止めてしまい申し訳ありませんでした。それでは…」
暫くぼーっとしていたからか、シェリーさんが少し眉を下げながら前屈みになった。
その時、シェリーさんの……その、…む、胸元が強調するように揺れて、…目のやり場に困った。
ので、私は逃げるようにその場を去った。
後ろで、シェリーさんが「また今度~」と手を振っているような気がした。
"また今度"
その言葉に酷く反応した。
その言葉が頭を離れなかった。
後ろを振り向くと、後ろを向いて歩いているシェリーさん。
…さっきから胸が暖かい。
この気持ちはなんなのかと、疑問に思いながら紅玉姫様を部屋へと送った。