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水戸部短編詰め合わせ

第3章 悔しい


 ふと背後を振り返ると、開け放たれた体育館の扉の向こう。真剣な表情で、でもとても楽しそうに練習している一人の男子が目に入った。バスケ部らしい長身と、そのおおらかでなんでも全部受け入れてくれるんじゃないかって雰囲気は到底同い年とは思えない。
「木吉、戻ってよかったね」
 無言だが、水戸部が頷くのを気配で感じる。あまり内情はしらないけど、去年の夏に木吉を欠いたバスケ部みんながしんどい思いをしたらしい、ことは、同じくクラスメイトでバスケ部の小金井がしょっちゅう溢していたからなんとなく知っていた。だからそれはすごくよかったんだろう。けど。
「バスケ部も、一年凄いの入ったんだね」
 今度は頷く気配はない。あたしの視線の先には見慣れない荒々しさを見にまとった長身の男子と、隣にはまるでスポーツをしていると思えない体つきの、男子、というより少年だ。でも彼らが入ったことで、バスケ部はまた強くなったとは小金井以下略。
 そして、木吉が戻ったことで。
「スタメン落ち?」
 今度はぴくり、とだけ反応。気配ではなく、直接見る。表情は俯いていてよくわからないけど、いつもの、それ以上に微妙な顔なんだろうな、と予想する。
 失敗したな、と少し思った。空気が重い。クールダウンもここまでやれば過剰だ。
 どうするかな、と言葉を探して、とりあえず、ひとつ息を吐いた。
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