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水戸部短編詰め合わせ

第3章 悔しい


「あ」
「……」
 体育館裏。走り込みの後少し休憩しに日陰を求めていたらそこでクラスメイトの水戸部に会った。
「……ぅス」
 自分でもなに言ってるかわかんない挨拶なんだかなんなんだかの声をかけると、水戸部は自分の座っていた場所を半人前程ずらして座り直した。……無言のまま軽く頭を下げられたんだけど、これって。
(隣に座れってか……?)
 どうしていいか少し考えて、空けられた半人前分離れて隣に座った。瞬間、通り抜ける風が気持ちよく汗を冷やしていく。
 隣に座るクラスメイトは本当に無口で、声も聞いたことがない。だから、当たり前だけどあたしが喋らなきゃ、ここは今とても静かな空間だ。遠いグラウンドからはサッカー部だろうか、ホイッスルの音と男子のでかい声がまるで音漏れしたイヤフォンから聞こえてくるように耳に届く。
 それより近く、背後の体育館からは水戸部の所属するバスケ部の練習する掛け声がダイレクトに響いている。
「練習、あんた参加しなくていいの?」
 尋ねると、曖昧な表情で小さく頷く。
「休憩?」
 今度ははっきり頷いて、手元のドリンクを煽るように飲む。見ればシャツも色が変わるほどに汗だくだった。
「あたしも」
 なんとなく気恥ずかしくなって、首にかけたタオルで汗を拭う振りで口元を隠す。……なんとなく。
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