第2章 クラスメイト、友達未満
数学のプリントを回収して、教室を出た。
(―――12、13、14……)
枚数を確認する手がふと止まる。
(水戸部、凛之助……)
少し古風でなんだか文字量が詰まったような名前だな、と思いながらその名前の持ち主の顔を思い浮かべる。彼の顔はずいぶん見上げた角度か、教室の隅から隅を見つめるような距離のある印象から近づいたことがない。
(一応、二年同じクラスなんだけど、な)
そのまま職員室へ入り、プリントを数学教師に事務的に渡し、次の授業が始まる前にと廊下を少し足早に教室へ戻る。
「あ」
その途中。
「……」
ぺこり、と何故か会釈された。
(水戸部凛之助)
ななも釣られたように軽く頭を下げてその脇をすり抜ける。
それだけ、それだけの、関係。
この先、この距離が縮まるのか。このままなのか。
まだ、青春は始まったばかり。