第7章 一つ遠くの
「ありがとうございました」
会計を終わらせ商品を手渡したが、目の前の男の子はなんだかそわそわと落ち着かないままレジの前から動こうとしない。
「? なにか……?」
ななが小さく首を傾げて見上げると、相手は視線を後ろの男の子にやり、なにやらアイコンタクトをとっている。
(なんだろう……)
まあ今は他に客もいないからいいんだけど、とぼんやり出方を待っていると、「ああ!」と楽しげな声がした。見れば後方にいる男の子がにやにやと笑って「おねーさんおねーさん」と声をかけてくる。
「また来るねって!」
「? は、はあ……またお越しくださいませ……?」
わざわざまた来る、だなんて。不思議な宣言を、不思議な形でされてしまい、そうこうしている内に背の高い方の彼は赤い顔でそそくさと店を出てしまった。
「じゃあねお姉さん、お仕事頑張ってねー! 待ってよ水戸部ー」
それを追いかけるように人懐こい表情の男の子も軽い足取りで店を出る。
(……ほんと、なんだったんだろう……)
少し考えた後、このコンビニの閑散とした状態を見て、励ましてくれたのだろうと思うことにした。
(だって、ねえ……)
年下の、それも話したこともない男の子に好意を持たれてるんじゃないかなんて自惚れたことを期待してしまうと、後々自分で凹んでしまいそうなのだもの。
「みとべくん、かあ」
また、本当に来てくれるかな。期待しないでおこうとおもいつつ、少しだけ、ななの胸はドキドキと甘い願いを望んでいた。