第2章 変わりもの
『私は柊絵夢といいます。えっと…よろしくお願いします…?』
「うん…よろしく。俺、葉月椎(はづき しい)。二十歳。4月5日生まれのA型。好きな食べ物は…ニンジンのグラッセで__________」
つらつらと並べられていく彼の、『椎』のプロフィールに、早くも私の頭はついていかない。
椎の話も早々に、きれいに輝く彼の目は嫌いじゃないななどと考えていた。思考が途切れ途切れしている間に彼の弾丸もとい自己紹介は終わっていた。
(思ってたよりも若かったな…)
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朝食の片付けも終わり、ひと息つこうと私はティーカップをふたつ出した。ソファに座りぼうっと外を眺めている椎の前にティーカップを並べる。
『椎くん、お茶どうぞ?』
「うん、ありがとう。」
(ほんときれいに微笑むな…)
ふたりの間には紅茶を啜る音だけが響く。彼が何か言いたげにこちらに幾度となく視線を送っているのに気づき、私は声をかけた。
『もしかして、お茶…お口に合いませんか?私、甘いお茶が好きで、うちにはこれしか置いてないんです…』
「ちっ…違うよ!お茶はすごく美味しい。俺もこのお茶…好き。だけど、なんで絵夢は敬語…使うの?俺の方が、多分年下でしょ?」
お茶が口に合わなかったわけではないようで安心していると、彼が気になっていたであろう質問を投げかけてきた。
特に敬語を意識したことはないからおそらく癖のようなものだと思う。
『多分…癖みたいなものだと思います。確かに椎くんの方が年齢は下かもしれませんが…そのあたりはあまり気にしないでください』
「それも嫌…」
『え……?』
「"椎くん"は嫌だ…椎でいい。」
突然の要求に私はつい口ごもってしまう。敬語をはずして話すことはあまり慣れていない。
最近では家族や親しい友人くらいの前でしかないだろう。一向に口を開こうとしない私に痺れを切らしたのか彼が近づいてきた。