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第10章 格闘(ヒロインside)


昼食時、案の定エミの事が広まっていた。

喧嘩を売ってきた5人の顔は痣が出来ておりエミを見るなり表情が青ざめる。

1人で昼食を食べていると女兵士が話しかけてきた。

「あんた、確かエミって名前だよね?」

無言でいるエミに対してその女兵士は話を続ける。

「人類最強の女兵士って言われてるらしいけど、どんな気持ちなの?」

不敵な笑みを浮かべて聞いてくるので仕方なく答えた。

「別に何とも思ってない」

「へぇ~そうなんだ。
まあ、私達だってあんたの事知らなかったからあの馬鹿達は喧嘩をふっかけた訳なんだけど、この兵団に居るんだからもう少し仲良くしようと思わないの?」

「思わない」

そう言いながら女兵士を冷たい目で見た。

「そんな顔しないでよ。
そうだ!
私と友達にならない?」

横で話す女兵士はニヤニヤと笑いながら言ってくるが、エミとっては気持ち悪いとしか思えなかった。

「私と友達となろうなんて変人だね。
ここに居る限り友達や仲間はいらない。
それに、私にとってここは気持ち悪い人の集まりだから」

「ふ~ん…
さすが王の側近に選ばれただけの根性はあるね。
調査兵団に居た時もそんな感じだったの?」

そろそろ面倒になってきた。

だが話しかけられた以上、とりあえず付き合う。

「調査兵団はここより全然良い。
少なくともあそこに居た時は仲間が好きだった」

「死に急ぎの兵団なのに?」

その言葉を聞いた瞬間、エミは勢いよく立ち上がり女兵士の胸ぐらを掴み持ち上げた。

「死に急ぎ?
例えそうであったとしてもこんな腐った兵団よりはマシだ。
ここにいる兵士はただの肩書きだけで兵士では無い」

「ちょ…ちょっと離して!」

じたばたする女兵士を押し倒すように手を離した。

咳き込む彼女の元に他の兵士が駆け寄り心配する。

「あんた見かけによらず馬鹿力だね」

「壁外では自分の身は自分で守らなくてはならない。
立体機動を使いこなすには力が必要。
そのぐらい訓練兵時代に習ってる筈だけど忘れたの?」

そう言って食堂から出ようとすると叫び声が聞こえた。

「あんたがいくら強くてもここでは通用しない!
騒動ばかり起こすと兵士の資格を剥奪され…」

「残念ながら私は剥奪されない」

そう冷たく言い放って食堂を出た。
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