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第10章 格闘(ヒロインside)


エミは部屋に戻ると真っ先にベッドに寝転んだ。

今回は5人しか居なかったので余裕で勝てた上に王が現れた事によりどうにか収拾出来た。

本当に喧嘩を売ってくるとは思わなかったが、ここでは自分を守ってくれる人はいないので自分で解決しなければならない。

先程の兵士の様子だと現時点では自分の異名を知る兵士は殆ど居ないと考えたほうが良いかもしれない。

それに王が放った言葉…

自分を相手にすると死ぬかもしれないというのはどういう事だろう。

一応死なない程度に力加減はしている。

もう何もかも嫌になってきたが昼食時の他の兵士の反応が少し怖かった。

きっとあの5人によって自分の事を知られるだろう。

そうしたら、この兵団で仲間を作るのは難しくなる。

大嫌いな兵団である為仲間を作りたいと思わないが、やはり1人は寂しかった。

非番無しで王の相手をしている方がよっぽどマシに思えた。

コンコン…

「!?」

ドアをノックする音が聞こえた。

自分なんかと関わろうと思う兵士等いるのか…?

そう思いながらもエミはドアを開けるとそこには見覚えのある人物が立っていた。

「貴方は…」

「ジェル・サネスだ。
覚えているだろ」

確かに目の前に居るのは中央第一憲兵団団長だった。

「君には申し訳ない事をした。
部下が君に喧嘩を売ったと聞いたんだが本当か?」

「はい」

「そうか。
ではもう1つ聞く。
5人を一気に相手にしたそうだが、喧嘩の際は何を考えていた」

エミは返事に困った。

「1対5でしたのでとにかく無我夢中でした。
しかし…失礼な事を言いますが、あの人達は全く強くも無くむしろ新兵以下と感じました」

「なるほど…」

ジェル・サネスは少し考えてからまた聞いてきた。

「君は喧嘩…いや格闘術は得意なのか?」

想像していなかった質問に驚きながらもエミは冷静に答える。

「いえ、格闘術は訓練兵で習った後に調査兵団で自分なりに身に付けたやり方なので得意とまでは行きません。
それに、格闘術は調査兵団ではあまり使いませんから」

「そうか。
では俺は失礼する。
邪魔をして悪かった」

そう言ってジェル・サネスは去って行った。

何か意図があって聞いてきたのだろうが、自分を探っている可能性が高い。

バレてはいけない何かを…
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