第16章 幸せ
翌日、久しぶりに兵服を着たエミを上から下までリヴァイは見た。
「似合ってるな」
「兵服に似合う似合わないってあるんですか…?」
そう言うとリヴァイは真顔で答える。
「お前とは兵服で接していた時間のほうが長いからな。
兵服姿のお前を見ると落ち着く」
相変わらずの口調に飽きれていると、いきなりリヴァイが目の前まで来て濃厚なキスをしてきた。
「今日は無理に交戦するな。
お前の事は俺が全力で守る」
「分かってますよ」
キスされた事に気分を良くしたエミは微笑むと2人で家から兵舎へと向かった。
兵舎に着くとハンジが後ろから抱き付いてきた。
「エミ、戻ってきてくれて嬉しいよ~!」
「は…ハンジさん、苦しいです…」
「ハンジ、お前エミを窒息死させる気か」
それを聞いてハンジは慌てて離れた。
「ごめんごめん。
いや~あまりにも嬉しくてさ!
それより、演習せずのいきなりの壁外だけど大丈夫?」
「兵長に任せるので大丈夫ですよ」
微笑んで言うとハンジは納得した様に微笑む。
「そうだ、これを渡すのを忘れる所だった」
そう言って立体機動装置を渡してきた。
「きちんとメンテナンスもしておいたから大丈夫だよ」
「有難うございます」
立体機動装置を受け取るとハンジは自分の班の所へと戻って行った。
久しぶりに装着するが体が覚えているのか何も違和感なくきちんと装備する事が出来た。
するとリヴァイが緑色のマントを渡してきた。
「有難うございます」
受け取って羽織ると馬に乗った。
そして扉の前に馬を走らせ、リヴァイの横に整列する。
「開門30秒前!」
エルヴィンの言葉に緊張感が漂う。
「エミ、無茶だけはするなよ」
「分かっていますよ」
リヴァイの言葉に微笑んで返事をする。
「第51回壁外調査開始!
総員進め!」
その号令を合図に全員が全速力で馬を走らせる。
背中には自由の翼のエンブレムがなびき、頭上では鳥が2匹羽ばたいていた。
(お父さん、お母さん行ってきます)
そうエミは心の中で呟いた。
そして2人の子供が両親に憧れ兵士の道へ歩む事にしたのは11年後の話だった。