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第10章 格闘(ヒロインside)


午後は部屋に篭って読書をした。

部屋から一歩出ると他の兵士が怯えた目で見てくる為うんざりしていた。

中央に来て3日目。

王以外とは親しく話す相手を作らず、ただ自分の存在を兵士達に植え付ける事にしていた。

それも今日で成し遂げただろう。

調査兵団では普段の自分を出す事が出来たが、ここでは何故か出せなかった。

もし出したとしても舐められるだけだ。

調査兵団を馬鹿にし、自分達のほうが偉いと自負している。

それがエミの感情が冷たくなる原因でもあった。

今の自分の姿を調査兵団の皆が見たらどう思うだろう…

そう考えたらリヴァイの顔が浮かぶ。

「兵長みたいだね…」

エミは少し鼻で笑った。

リヴァイから貰ったクラバットを胸ポケットから出すと、まだ数日しか経ってないのに懐かしさを感じた。

名前が刺繍された部分をなぞると涙が込み上げてくる。

会いたい…

リヴァイも同じ気持ちでいるのかは分からない。

せめて今調査兵団がどんな様子なのかが知りたかった。

でもここは内地だ。

調査兵団の兵舎までの道のりはかなり遠い。

もしここから抜け出そうとして捕まってしまったら拷問が待ち受けているだろう。

捕まらない自信はあるがリヴァイとの結婚を考えると辞めたほうがいい。

エミはため息をついて夕食は食べずにベッドに横になった。

王の側近である為かベッドのサイズは大きい。

このサイズはリヴァイの私室にあるベッドと同じ大きさだった。

1人で横になると物足りなく感じる。

ここにリヴァイが居れば安心して眠る事が出来るだろうが今はそれは叶わない。

するとドアの方からカサッと音がしてエミはドアのほうを向いた。

ドアの下に紙のような物がある。

ベッドから起き上がり紙を拾って中を見るとエミは目を丸くして驚いた。

『次の非番が決まったら理由をつけて街へ行け。
そして帰りに内密に師団長に会いなさい。
非番の日が決まり次第、師団長には報告しておく』

誰がこんな物を…

ドアを開けて廊下を見渡したが誰も居なかった。

ここには自分の味方は居ないと思っていたが、間違いだった。

誰かは分からないが協力者が居る事は確かな事を今初めて知った。

それが嬉しかったエミは暫くその紙を眺めていた。
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