第10章 格闘(ヒロインside)
翌日朝食を食べる為に食堂へ向かうと数人の兵士に突然囲まれた。
「お前が例の兵士か。
聞いたぞ。
不服があるなら相手をしてやるってな」
ニヤニヤしながら目の前の兵士が言ってくる。
黙ったまま周りに誰も居ない席へと向かおうとすると襟をおもいっきり引っ張られた。
「おいおい、まさかビビッてんじゃねぇよな?」
その言葉に食堂に居た兵士達が笑う。
「離してください」
「ん?
聞こえねぇな~」
「離せって言ってんだよ!」
そう叫ぶと同時にエミは襟を掴んでいた兵士の足を勢いよく蹴り、腹を踏む。
その光景を見て取り囲んでいた他の兵士が1歩後ろに下がった。
「ここは食堂です。
喧嘩を売るなら外にして頂けませんか?」
冷たい目で踏んでいる兵士を見るとその人物は鼻で笑った。
「上等じゃねぇか。
確かお前は今日非番を与えられたそうだな。
俺も非番だからちょうど良い。
おい、お前らもやるよな?」
1歩下がった所で見ていた兵士の1人が僅かに笑いながら「勿論だ」と答える。
「なら決まりだ。
朝食後に中庭に来い」
そう言いながら踏みつけている振り払うと兵士達は席へと向かった。
エミはさっさと食事を済ませ、先程の兵士が言っていた中庭へ行く。
喧嘩を買ったは良いが王はそれを許すだろうか?
でも売られた喧嘩は買うつもりでここに居る。
牢獄に突っ込まれようが何をされようが別に構わなかった。
それは、全て自分の立場をこの兵団で確立させる為だ。
昨日の今日でいきなり喧嘩を売られるとは思っていなかったが、それだけ自分を疎ましく思っている兵士が多いという事だろう。
そう考えていると兵士が5人エミの元に来た。
先程取り囲んだ兵士達だ。
「もう来ているとは早いね~
そんなに喧嘩が好きなのか?」
からかう兵士をエミは何も言わずにただ見つめる。
「俺達だってストレスが溜まってんだ。
もしお前が負けたらお前の体を堪能させて貰うからな」
相変わらず気持ちの悪い顔で笑いながら話してきた。
「別に良いですよ。
何人でかかってきますか?」
「1人だと不満だろうから5人一気に相手して貰おうじゃないか」
そう言うな否や1人の兵士が殴りかかってきた。
「遅い」
そう言ってエミは向かってきた手を避けて腹を蹴り上げた。