• テキストサイズ


第8章 憲兵


翌朝、目を覚ましたエミは一瞬何処にいるのか分からなかった。

憲兵の宿舎か…

調査兵団の部屋に慣れていたせいか違和感を感じる。

時計を見ると7時を指していた。

ベッドから起き上がるとテーブルに置かれた馬のエンブレムが刺繍されている新しい兵服を見た。

今日からこれを着なければならない。

嫌だったが我慢して兵服を着た。

朝食を食べる為に昨日兵士から渡された地図を頼りに食堂に向かう。

食堂に着くと既に食事を取っていた兵士達が一斉にエミを見た。

すると1番近くにいた兵士がエミに向かって言った。

「死に急ぎの調査兵団から来た例の奴か」

他の兵士はそれを聞いてクスクスと笑う。

「エミ・ユベラです。
今日からお世話になります」

そう言って敬礼をすると周りに誰もいない席を見つけ椅子に座り朝食を食べる。

「あれが元兵士長補佐?
全く見えないんだけど」

「あんなので王を守れるの?」

エミに対して嫌味な言葉が嫌でも聞こえる。

さっさと朝食を終え食堂を出るとエミは王がいる部屋へと向かった。

部屋に着くと見張りの兵士が立っており、ドアが開かれた。

「ユベラか。
こっちへ来い」

そう言われてエミは王の前まで行った。

まだ朝だというのに酒を飲んでいるのが匂いで分かる。

朝から酒だなんて…

敬礼をして立っているエミを見て王が話した。

「お主も一杯どうだ?」

「お心遣いに感謝します。
しかし、私はお酒は飲めません」

エミは咄嗟に嘘を言った。

酒に関しては1度調査兵団で飲んだ事があるが、王の前であの時の醜態を見せたく無かった。

「それなら仕方無い。
ではポーカーは出来るか?」

目の前の人物は机に置いてあったトランプを手に取り切り出した。

「曖昧ではありますが、やった事はあります」

「ならば相手をして貰おう」

そう言われてエミは王の反対側に座った。

王の仕事は娯楽を楽しむ事なのかと思うと呆れたが、側近である以上逆らう事は出来ない。

「ただ何も賭けずにするのは面白くない。
ここは1度何かを賭けよう。
そうだな...
わしが負けたら特別に非番を与える」

それを聞いてエミはヤル気を出した。
/ 163ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp