第8章 憲兵
吐き気がしてベッドに転がんだエミは胸ポケットからリヴァイから貰ったクラバットを取り出した。
「...兵長」
リヴァイの名前が刺繍が書かれた部分を見てそれを抱き締めた。
エルヴィンは数年と言っていたがもっと早く会いたい。
連絡も取れない。
エミは再び寂しい気持ちが広がった。
調査兵団は居心地が良かった。
だが、ここは冷たい。
きっと中央憲兵にとっては自分の存在を認めたくないのだろう。
だから名前も教えて貰え無かったのかと思うと悲しかった。
いつになるか分からないリヴァイの迎えをひたすら待ち続けるのを耐える事が出来るのだろうか...
そう考えると涙が溢れてくる。
王に結婚を認めてくれなくても調査兵団に残る事は可能だった。
だが、自分が生まれたばかりの時に事前に話し合いがされてたとは思っていなかった。
どうして自分だけ特例なのか...
自分が何をしたというのか...
そして父にそっくりな王。
何か引っかかる部分が多過ぎる。
エミはシャワーを浴びて私服に着替え、今まで着ていた調査兵団の兵服はタンスにしまう。
明日から中央憲兵での仕事が始まる。
不安に駆られたがそんな訳にはいかない。
王の側近ならばそれなりに仕事をしなければならないか...
この腐った兵団をどうにか出来ないのか?
憲兵に取ってはエミは新兵同然だ。
明日から何が起こるか分からないが、とりあえず寝たかった。
ベッドに潜り込んでクラバットを握り締める。
そのクラバットは未だにリヴァイの香りがした。
そしてその香りを嗅ぎながらエミは落ち着きを取り戻し、やがてスヤスヤと寝息を立てなから眠った。