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第8章 憲兵


何も言わずに立っているエミを見て王が言った。

「ナイル、もう下がってよい」

「分かりました。
失礼致します」

ナイルはまた敬礼をして部屋を出た。

今部屋に居るのは王と側近と思われる兵士、そしてエミだけだ。

「お主の事は調べている。
7年前に訓練兵を首席で卒業した後調査兵団に入り、現在は兵士長補佐。
過去には母親は出産直後に死亡。
父親は謀反を犯し処刑にて死亡。
間違いはないか?」

「ありません」

そう答えると王は静かにエミを見つめる。

「今回、婚姻について承諾しないが異論は無いか?」

「私の立場を考えると当然だと解釈しています」

エミは平然と答えたが心の中は荒れていた。

目の前にいる人物はただの王では無い。

そう確信はしていたが証拠が無かった。

「私の側近になるが、他兵団との連絡は認めん。
師団長も例外ではない」

「承知しております」

王の目は冷たい物だった。

兵士をただの駒として扱い、自分自身だけを守る。

兵士は王の命令に逆らう事は出来ない。

「では明日から私の元に付け。
今日は部屋に戻れ」

「分かりました」

エミは再び敬礼をして部屋を出た。

部屋を出ると先程いた兵士ともう1人兵士が立っていた。

「お前がエミ・ユベラだな」

「はい」

「部屋に案内する。
ついて来い」

そう言ってその兵士が歩き出したのでエミも歩いた。

「あの...」

「何だ?」

面倒くさそうに兵士を見る。

「お名前を教えて頂けませんか?」

「教える必要はない」

それだけ言ってまた前を向く。

その態度にナイルが言った事を思い出した。

本当に中央憲兵は腐っている。

新しく用意された部屋に着くと兵士は地図を渡してきた。

「これを見て兵舎内の構造を覚えろ。
時間は他の兵団と同じだ。
くれぐれも遅れないよう厳守しろ」

そう言って兵士は去った。

残されたエミはとりあえず部屋に入った。

調査兵団の兵舎から持ってきた荷物はエルヴィンの言った通り運び込まれていた。

片付けは明日しようと思い、テーブルを見ると憲兵団のエンブレムが描かれた兵服が置かれていた。

明日からこれを着なければならない...

それを考えただけでエミは気分が悪くなった。
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