第1章 夢
10分程経った所でドアをノックする音が聞こえ、返事をするとリヴァイがお盆に乗せたスープを持って入ってきた。
「自分で食べれるか?」
「はい」
そう短く答え、まだ痛む背中を奮い立たたせてテーブルの横にある椅子に座る。
リヴァイはそのままエミの前にスープが入った器を置くと、目の前の椅子に座った。
少しずつスープを飲むエミをリヴァイは黙ったまま見ている。
「お前、猫舌か」
「えっ...?」
顔を上げるとリヴァイはエミの顔を見つめていた。
自分でも気付かなかった事だった。
そういえばいつも熱い物を食べるときは少し冷ましながら食べていた気もする。
困惑した表情でリヴァイを見つめていたが、とりあえずスープを食べる事に集中しようとまた器にスプーンを運ぶ。
食べ終わると、リヴァイは立ち上がり食器を片付けてくれた。
エミはそのまま椅子に座ったままだったが目線だけはリヴァイを捉えている。
(凄い観察力だな...)
調査兵団に入って7年経つ。
そして今では班長を任されるようになった。
だがプライベートでリヴァイと接する事は少ない。
リヴァイと会話する時はいつも壁外調査の事や演習での報告書についてばかりだった。
それ以外では仲間達と話していてもリヴァイはほぼ無口に近い。
いつも無表情で感情を表に出す事は無いが、それでも話は聞いているようで、考え込む時は眉間に皺を寄せている。
そんな彼でもエルヴィンの前では違っていた。
元々エルヴィンによって調査兵団に入ったとは聞いていたが、エルヴィンの前では感情を剥き出しにする事が多い。
一兵士であるエミの前では無表情か眉間に皺を寄せるか...
それだけだった。
そんな事を考えているとリヴァイがいつの間にか横に立っていた。
「エルヴィンがお前に話があるそうだ。
今すぐでなくていいとは言っていたが、お前を呼ぶという事は大事な話なんだろう」
それを聞いてエミはガタンと音を立てながら椅子から立ち上がった。
「今すぐ行ってきます!」
背中の痛み等どうでもいい。
慌てて制服に着替え部屋を後にする。
部屋を出る際に背後から「おい!」と聞こえた気がしたがエミは走ってエルヴィンの執務室に向かった。
その姿を見てリヴァイは不安を募らせた。