第6章 運命
「君が訓練兵になったのはもう10年も前の事だが...
これから話す事は君が兵士になるのを志願した際に万が一の事を想定して各兵団代表の話し合いにて決められた決定事項についてだ」
「何故私だけ…」
「これは王政も関与していてね。
王が下した命令でもあり、最重要極秘事項にも当たる」
「王政…ですか…」
エミには何故王政が自分自身に関与しているか分からない。
父の事が原因であっても、王自ら命令を下すのは謎だった。
しかも最重要極秘事項というのも気になった。
エルヴィンは静かにエミを見つめたまま、感情を感じさせない口調で話す。
「結婚する際、通常は王の許可は普通に出る。
だが、君に関しては少し違うんだ。
何故かは...今君に話す必要はない。
いずれ分かる」
あえて言わない辺りからエルヴィンにも考えがあっての事だと思い問わなかった。
リヴァイの方を見るといつもより眉間の皺が濃いように感じた。
「そしてここからが1番重要な部分になるが...
君は兵士になった。
この事が更に難しい状況を生んだ。
君が希望した事だ。
兵士である以上、結婚しない女性もいるのは事実だからね。
だがもし婚姻したいと希望した場合...」
少し間を置いてエルヴィンは更にゆっくり告げた。
「君の身柄を1度憲兵団に置く事になる。
それも、師団長でさえもあまり関与出来ない中央だ」
「!!
中央って...王直属の...」
「そうだ」
吐き気がした。
エミが兵士であっても無くてもどの道王の許可が難しい。
それは自分にとっては何の壁にならない事は分かっている。
だが、自分が中央憲兵に行かなければならない。
兵士を嫌っていた自分が兵士になり、首席ながらも憲兵に行かなかった理由。
父の背中を追って調査兵団になったのは無論だが、憲兵のあのエンブレムだけは嫌だった。
幼い頃、記憶には殆ど無いが何かあのエンブレムを嫌っていた。
エミは今更になって幼い頃の記憶が少し蘇るのに呆れたが、それ以前に聞きたい事がある。
「兵長は...」
「お前を補佐にする際に知った」
「では団長はこうなる事は予測されていたのですか?」
「勿論だ。
こんな早くになるとは思わなかったけどね」
エルヴィンは困った様に少し笑う。
エミは思わず項垂れた。