第6章 運命
「話とは何でしょう...?」
エルヴィンの顔を恐る恐る見ながら聞くと優しい表情とは程遠い、でも遠征時の冷酷さを感じさせない表情でエミを見てきた。
「君は本当にリヴァイと結婚したいのかい?」
「何故そんな事...」
「答えなさい。
凄く重要な事に関わってくる」
エルヴィンから放たれる言葉は冷たかった。
補佐になれと言われた時も冷たかったが、その時よりも更に冷たく感じる。
「...私は...」
今この張り詰めた空気に耐えるだけで必死なエミは質問に答えようとするが言葉が詰まってしまう。
だが答えなければ何を言われるか分からない。
「私は兵長と出会ってから世界が変わりました。
私が知らなかった事、ずっと知りたかった父の事を隠さずに教えて下さいました。
私は...」
ゆっくり息を吐き気持ちを落ち着かせ一気に言葉を吐いた。
「いえ、私には兵長が必要です!
兵長のお傍に居るだけで私の心は安心するんです」
「なるほど」
そう言ってエルヴィンはリヴァイを見据えた。
「リヴァイ、覚悟は出来てるんだな」
「あぁ...」
「ちょっと待って下さい!
さっきからお二人共変です!
何かあるなら隠さずに話して下さい!!
私に関する事なら私にも知る権利があるのではないですか!?」
エミが怒鳴るのはかなり珍しい事だが、それに対して驚く様子は2人共見せなかった。
口を開こうとしたリヴァイを止め、エルヴィンは静かに話した。
「君の言う通りだ。
そこまで知りたいのなら話すが、これを知るという事は君の身の保証は出来なくなるかもしれない」
「構いません。
父が死んで私は変わりました。
私の身は私自身で決めます。
その代わり...」
エミは今までエルヴィンに見せた事が無いであろう冷たい表情で言い放った。
「兵長との結婚を認めて下さい」
その姿を見てエルヴィンの表情は緩みフッと笑った。
「兵士らしい良い表情が出来る様になったね。
そこまで覚悟したのなら話そうじゃないか。
リヴァイ、構わないか?」
「好きにしろ」
リヴァイもエミを見ていたがその表情は兵長の表情で優しさは少しも感じられないものだった。
それを確認したエルヴィンはエミのほうへと向き直し、落ち着いた声で話し始めた。