第6章 運命
エルヴィンの執務室の前に到着するとリヴァイは躊躇いなくドアをノックして返事を待たずに入る。
まだ腕を掴まれていた為、それに連れられてエミも無断で入る状態になってしまった。
「エルヴィン」
入るや否や仕事中のエルヴィンの前まで行き、リヴァイは胸ポケットから1枚の紙を取り出してエルヴィンの前に置いた。
いつもこんな感じなのかエルヴィンはチラッとリヴァイとエミを見て置かれた紙を見る。
「サインしろ」
リヴァイは無表情で言っているが腕を掴んでいる手は少し汗をかいている。
「これは…
本気か?」
「当たり前だろ」
「では何故彼女のサインが無いのかな?」
2人のやり取りの意味が分からず戸惑っているエミを見てエルヴィンは紙を差し出す。
やっと開放された腕で紙を受け取り、内容を読んだエミは顔を真っ赤にしてリヴァイを見た。
「これいつの間に書いたんですか?」
「お前が窓の外を見ていた時だ」
「えっ!?
それだったら言って下さったらその時にサインしたのに」
「ならばこれは本気だという事だね」
エルヴィンが2人の会話を遮る様に言葉を発したが表情が硬い。
リヴァイが持ってきた紙は婚姻承諾書だった。
そこにはリヴァイのサインはされていたがエミのサインは無い。
「君のサインが無いが同意しているのかい?」
「...はい。
ただ、その紙の存在は今知りました」
「なるほど」
エルヴィンは何か考えている。
「リヴァイ、これはどういう事だ」
「何がだ」
「何故エミにサインをさせていない?」
リヴァイとエルヴィンのやり取りを見て違和感を感じる。
エルヴィンの言う通りだ。
目の前にエミが居ながらもサインを求めて来なかった。
「サインさせたら認めるのか?」
リヴァイの言っている意味が分からない。
これではまるでエルヴィンの許可が下りない事が分かっていた様にしか聞こえない。
エルヴィンは小さくため息をつくと2人を座るように促す。
「話し合いが必要だ」
「チッ...」
リヴァイは舌打ちしながら目の前にあった椅子に荒々しく座る。
エミもリヴァイの隣にあった椅子に座ると2人が睨み合っているのを見た。
「この許可をするには少々エミから話しを聞く必要がある」