• テキストサイズ


第2章 真実


エミが着替えを取りに行って30分以上は経っていたが、一向に帰って来ない事にリヴァイは苛立っていた。

きっとハンジか部下達に絡まれて遅くなっているのだろう。

だがリヴァイもいつまでも待っていられるような人間ではない。

様子を見に行こうとドアを開けようとした時、ドアがノックされた。

そのままドアを開けるとエミが汗だくで立っていた。

「お...遅くなって申し訳ありません」

とりあえず部屋の中に入れてドアの鍵を閉める。

「随分と遅かったな」

「実は...」

エミは息を切らしながら説明した。

話によるとエミが自室に行くと既に部屋の前に人高りが出来ており、振り払うのに手こずったらしい。

リヴァイの予想通りだった。

「とりあえず風呂に入れ」

「いえ、先に兵長がお入りに...」

「俺は後でいい。
先にその汗だくの体をどうにかしろ」

エミは自分が汗だくになっているのに気付いて無かった。

それ程必死で逃げてきたという事だった。

「ではお先に失礼します」

そう言って浴室に向かった。

エミが入ると既に浴槽にはお湯が張られており、入浴剤で白く濁って良い匂いが立ち込めていた。

その匂いをエミは知っていた。

「家にあったのと同じだ...」

かつて父と住んでいた家。

入浴剤に関して父は何故か強いこだわりを持っており、父と街に出掛ける時は必ずその入浴剤を買っていた。

その入浴剤は特に変わった物では無かったが、石鹸を基調とした何とも言えない良い香りだ。

(お父さん...)

瞼の裏には優しい父の顔が焼き付いている。

エミは大きく深呼吸してまた泣きそうになる心を奮い立たせる。

リヴァイにこれ以上迷惑をかけてはいけない。

そう思いシャワーを浴びてから浴槽に入る。

目を瞑るとまるで家にいるような感覚に陥った。

(幸せだ...)

そして今感じている幸せな気持ちをエミは満喫した。
/ 163ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp