第2章 真実
こんなに泣いたのはどのぐらい振りだったのだろう。
エミの身内は父しかおらず、父が死んだと分かった時も涙が少し流れる程度で号泣するまででは無かった。
壁外調査で殉職した仲間達を見ても涙は出なかった。
それが、心のタガが外れた今はひたすら泣いていた。
きっと無意識に涙が出るのを止めていたのかもしれない。
誰も教えてくれなかった父の死。
リヴァイとエルヴィンしか知らない事だが、ずっと知りたかった事をリヴァイから聞けた。
そして何より...
父が置かれていた立場に自分を置くことを提案してくれた。
もう自分の心の中はリヴァイの優しさで満たされていた。
一通り泣き終えるとエミは掠れた声でリヴァイに言った。
「兵長...有難うございます」
顔を上げるとリヴァイは驚いた様にエミを見ていた。
リヴァイは恨まれて罵られると思っていたが、予想とは裏腹の言葉を言われ返事に困った。
それと同時にエミを守りたいと思った。
エミを傍に置きたいと思ったのは何となくだった。
別に他の仲間達を信用していない訳ではないが、エミは別だった。
エルヴィンに提案した時、1度は断られた。
勿論エルヴィンは「罪滅ぼしか?」と聞いてきた。
だが、彼女の父の事を知っているのはリヴァイとエルヴィンだけだ。
またエミの父の実力はリヴァイ程では無いが他の兵士を遥かに上回る。
そしてその血を受け継いだエミもまたかなりの実力者だ。
7年前訓練兵を主席で卒業し、憲兵団に行くものかと思っていたが調査兵団を希望した。
入隊式の時、エルヴィンが壁外での新兵の生存率を言ってもエミは全く動じず真っ直ぐとエルヴィンの言葉を聞いていた。
そしてエミにとって初めての壁外調査で隊員達は巨人を次々と倒していく姿を見て息を呑んだ。
その姿は新兵とは思えない、まるで兵長のように鮮やかで無駄の無い華麗な動きだった。