第12章 策略(ヒロインside)
「この事実を公表しない代わりに彼女を調査兵団への移籍と、調査兵団兵士長リヴァイとの婚姻の許可を頂きます」
エミは銃口をエルヴィンに向けたまま絶句していた。
これではまるで王と賭けをしている状態だ。
元々エルヴィンは賭け事が好きだと知っていたが、こんな重要な事までも賭けをするとは思っていなかった。
「なるほど。
そこまでして何故また調査兵団へ戻したがる」
「きっとこのままでは貴方は彼女によって殺されます。
側近にしたのが命取りになるでしょう」
「そんな事はしません!」
エミは叫んだ。
3人がエミのほうを見るとエルヴィンは冷たく言葉を放った。
「君が側近である限り王を守るという義務があるのは分かっているが、本当の気持ちはその銃を君の隣に居る人物に向けたいのではないのかい?」
そう言われて反論出来なかった。
確かにそうだった。
自分自身、今1番殺したいのは横に居る王だ。
しかし、王が自分を信じている限り殺す事が出来ない。
「ユベラ、いやエミと呼ぼう。
お主はわしを殺したいと思っておるのか?」
「…私は…わ…わた…しは…」
エミの目は涙で溢れて今にも流れそうだったが、堪えながら答えた。
「私は貴方に騙されました。
宗家は貴方で私が分家であると。
しかしそれが逆であるのであれば何故その話をしたのですか…
ですが今となってはその事はどうでも構いません」
銃を下しながら一生懸命話す。
「私の運命は生涯をかけて受け止めると決めていました。
でも今は違います。
王…いえ、伯父さん…
私の移籍と結婚を認めて下さい…
貴方も人間の心をお持ちであるのであれば…
唯一の親族である私に幸せを与えて下さい」
エミは等々涙を流した。
耐え切れなかった。
その時、外が騒がしくなった。
ドアが思いっきり開いたかと思うと見覚えのある人が現れた。
「兵長!」
思わず叫ぶと紙をエミの前にあった机に勢いよく置く。
「サインしろ」
差し出されたペンで名前を書くとそれを今度は王の前に躊躇う事無く置く。
「サインしろ」
王は渋々サインすると笑顔で「幸せになれ」とエミに告げた。
「有難うございます」
そう言って王に涙を流しながら笑顔を見せエルヴィン達と共に部屋を出た。