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第12章 策略(ヒロインside)


翌日、珍しくエミはスッキリと起きる事が出来た。

夕方が待ち遠しい。

はやる気持ちを抑えて王の部屋へ行くと王はエミ見た瞬間笑顔を見せた。

「今日は目覚めが良かったのか?」

「何故、お分かりになられたのですか?」

「いつもより顔色が良いからのぉ」

そう言われてエミは少し恥ずかしくなった。

「そんなにいつも顔色が良く無かったのですか?」

「雰囲気で分かる」

エミは分からないでいると王は答えた。

「いつもどうり無表情なのに変わりはないが、目が違うんじゃ」

「…目ですか?」

「人という物は感情を押し殺しているつもりでも目だけは正直じゃ。
わしは兵士を見る時は必ず目を見る事にしておる。
王と分かって接してくる者は感情を見せまいと必死じゃが、目までは感情を隠す事が出来ない」

そう言って王は机に置かれたカップを指で指しながら微笑んだ。

「お主は確か紅茶が好みだと聞いた。
上物の紅茶を淹れさせたんじゃが一緒に飲むか?」

「はい、頂きます」

エミは王の横に座り紅茶を一口飲んだ。

「…これは!」

この味に覚えがあった。

リヴァイが好んで飲んでいる紅茶と同じだった。

「知っておるのか?」

「はい。
茶葉の名前までは知りませんが、調査兵団に居る時によく飲んでいました」

「それなら尚更良かった。
これで少しは心は落ち着いたか?」

「はい」

その時エミは初めて王に笑顔を見せた。

王は自分の事を本当に信用し、そして唯一の親族である自分を大切にしてくれている事を知った。

「今日は大変な1日になるじゃろう。
せめて今だけでもゆっくりとしよう」

「1日と言っても謁見があるのは夕方では?」

「少々時間を早めた。
謁見は昼にする」

「承知しました」

そう言ってエミはまた一口紅茶を飲んだ。

同じ茶葉でも淹れ方次第で味が変わる。

ここまで美味しい紅茶を淹れるのは、今飲んでいる紅茶を淹れた人かリヴァイぐらいだろう。

「団長と話す際の時間じゃが、ゆっくりと話すが良い。
その間は別の兵士に就いて貰うからわしの事は気にしなくて構わない」

「有難うございます」

そう言いながらエミは再び笑顔を見せた。
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