第12章 策略(ヒロインside)
「謁見は1週間後にしよう」
王はエルヴィンから届いたのであろう書類に日にちと時間を書きサインすると、早馬で送るように兵士に告げた。
その後1週間は何事も無くいつもどうりに過ごした。
エミ自身の話を聞き、図書館の利用許可が下りていたが行く事をしなかった。
きっと知ってしまっては壁外の時の様に記憶を無くして王を襲ってしまうと考えると怖かった。
相変わらず兵団の中では仲間を作る事はせず、王の側近として職務を果たす事だけをしていた。
ただ夜になって王から離れ、自室に戻るとやはり寂しかった。
風呂に入る度に入浴剤の匂いで父とリヴァイを思い出し、風呂から出るとタンスに閉まった調査兵団の兵服を眺め、寝る際はリヴァイのクラバットを顔の横に置いて寝る。
知らない人から見たら変態と思われそうだが、エミにとって何より大事なのはリヴァイだ。
リヴァイが居る事によってどうにか自分を保つ事が出来る。
「やっと、明日団長に会える…」
そう呟くと嬉しい気持ちになった。
リヴァイでは無い事が悲しかったが、それでも中央に来た時に王から言われた『他の兵団との接触は許さない』と言われた時よりかはマシに思えた。
団長と話せるのであればリヴァイの様子も聞ける。
早くリヴァイの様子を知りたい…
それがエミの1番の願いだった。
時間は明日の夕方。
どのぐらい話す時間を許してくれるのかは分からないが、とにかくリヴァイの事だけでも聞けたらそれで良かった。
中央に来て約10日。
予想外の早さだったが、これを機会に調査兵団に戻れる可能性も出てくる。
全てはエルヴィン次第だ。
調査兵団で1番の策師。
いや、ハンジの次かもしれない。
どちらにせよ何か切り札を出してくるのは間違いない。
王がそれに屈服するかどうかが問題だが、エミは王の側近として謁見中何かあれば王を守らなければならない。
相手が調査兵団だとしても…
謁見の際は側近は銃を構える事になる。
そうならなければ良いのだが…
そう考えていると眠気に襲われてエミは目を瞑った。