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第12章 策略(ヒロインside)


「一時は取り押さえたんじゃが、まだ3歳の娘がおったからのぉ。
運悪く、その時父親は壁外調査に出ていた。
じゃから、一度母親を家に帰した。
そして、父親が帰還してきてから憲兵が母親を連行し、処刑が実行された」

エミは必死で思い出そうとした。

母が連行された時は自分もその場に居た筈だ。

思いだせ…

思い出せ……

思い出せ!!!!!

その時、エミの頭に電流のような物が走ったような感覚があった。

…思い出した。

何もかも。

写真も無かったので母の顔も覚えていなかったが、その顔。

そして憲兵が家に入り込み、強引に母を連れて行った事。

父が一生懸命、憲兵から母を取り返そうとして殴られ、ボコボコにされた事。

エミの目から涙が流れた。

母は確かに生きていた。

いつも美味しいご飯を用意してくれ、いつも笑顔で優しくて、絵本を読み聞かせてくれた事。

そんな幸せな生活が一瞬にして憲兵によって崩された。

「その様子じゃと、思い出したか…」

「…はい」

「先程お主は憲兵の兵服を着ると笑えなくなると言ったのぉ。
きっとそれがきっかけじゃ。
憲兵を無意識に毛嫌いしている原因もそこからじゃろう」

涙が止まらなかった。

憲兵の兵服を見ると吐き気がする原因は全てそれが原因だった。

「今話した事は大まかな事だけじゃ。
詳しく知りたければ先程も言った様に図書館に行きなさい。
全て厳重に管理しておる」

「いえ、行きません」

エミの返事に王は驚いてやっと顔を向けた。

「これ以上知ってしまえば私は貴方を見た瞬間に殺してしまうでしょう。
私は貴方に命じられて側近をしています。
重役である以上、情報を詳しく知る必要はありますが、私には全てを受け止めれる様な器を持ち合わせていません。
なのでこれ以上は知らないでおきたいのです」

そう答えると王は微笑んだ。

「予想外の言葉で驚いた。
お主がわしを憎んでいるのは知っておるが、与えられた任務を全うする素晴らしい兵士じゃ。
調査兵団の団長と会う時は、お主はわしの横に居る事を命ずる。
そして…」

王は微笑んだままエミを見つめながら言った。

「少しだけ団長と話す時間を与えよう」

「…本当…ですか?」

エルヴィンと話せる…

そう考えただけで涙が更に溢れた。
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