第12章 策略(ヒロインside)
その後はいつもどうり娯楽に付き合わされた。
相変わらずポーカーが好きらしい王は少し意地になっているようだった。
その最中、ドアが開かれジェル・スミスが入ってきた。
「失礼します」
「何じゃ?」
「これをお読み下さい」
そう言われて王は受け取った紙を見て直ぐにサインをすると返した。
「それでは失礼致しました」
敬礼をし直ぐに部屋を出て行く。
「今の書類は何だったのですか?」
「婚約承諾書じゃ」
それを聞いてエミの胸がチクリと痛くなった。
こんなにあっさりと結婚を認めるのか…
そう思っていると王はエミ見ながら言った。
「お主の事を考えたら認めたい気持ちはあるんじゃが、どうしても出来なくてのぉ」
「そのお気持ちだけでも受け取っておきます」
そう言ったエミの声は冷たかった。
平然としているつもりだが、どうしても承諾書にサインをする姿を見るとやはり心が痛む。
「そうじゃ。
散歩でもするか?」
「散歩…ですか?」
「1日中この部屋に居てもつまらんじゃろう。
中庭にでも行くかの」
「分かりました」
そう言ってエミは傍に置いてあった銃を持つ。
正直銃の扱いは慣れていないが憲兵ではよほどの事が無い限り立体機動を使う事を許されていない為、銃を持ち歩く。
王が部屋を出ると1歩後ろを歩きながらエミも部屋を出る。
中庭に着くと綺麗に整えられた芝生や花壇があった。
「確か、昨日はここで喧嘩をしたんじゃったの?」
「はい」
気まずそうに答えると王は笑った。
「何、気にする必要はない。
ここに来る兵士は最初は誰でも舐められるもんじゃ。
特にお主は調査兵団から来たからのぉ。
今ここにおる兵士はお主が言った通り、新兵以下じゃ」
「では何故演習を行わないのですか?」
そう質問すると王の顔が険しくなった。
「中央憲兵は精鋭の集まりだと言われておる。
じゃが塀の中ではここが一番安全な場所じゃ。
好き好んで演習をしようと思う者はおらぬ」
そう言うとエミの方を向き表情を変えずに聞いてきた。
「お主は何かしておるのか?」
「私は暇な時に筋肉トレーニングをしています」
それを聞いた王は上機嫌になった。
「やはりお主を側近にして良かった」
エミは少しだけ微笑んだ。