第2章 僕と私の話 1
『私は私が嫌いなの。どうしようもない私が大っ嫌いなの。生きてることも許せないの、死にたいと願ってるのに、死ぬ勇気さえ持てない自分が、私は嫌いなの』
「それでも君は、生きてる」
『そう、死ぬ勇気がないから』
「僕が殺してあげようか?」
『ありがとう』
「でも、僕に君を殺すことはできないよ」
『どうして?』
「その理由は君と同じだよ。」
『勇気がないの?』
「そうだよ」
『でもそれは違う。私は死ぬのが怖いの、とても怖いの、どんなにこの世界が嫌いでもそれでも、必死に必死になんとか片手でもこの世界にくっついて、生きていないと、自分がバラバラになって、もう何もかもわからなくなって、私自身もわからなくなって、あなたのこともわからなくなって、私はもうどうしていいかわからなくなるのが本当に怖いの。きっと死ぬとはそういうことなの、世界から離されて、もうバラバラになって、私はあなたをわからなくなって、私自身もわからなくなってしまう。そういう怖さなの、その怖さに勝つ勇気がないの。あなたの勇気は違うでしょ?だってあなたは、私じゃないもの』
「うん。」
『だなら違うの。私とあなたのそれは違うよ』
「僕はね、君がいない世界が怖いんだ。」
『…。』
「つまりそういうことだよ」
『うん。』
「別に君が死にたいなら死ねばいい、本当に殺してほしいなら、君の願いをら叶えようとさえ思う。でも、僕は君がいない世界が怖い。こうやって話してる時間だって、君がいなかったらどう過ごしてたかわからない。そう思うとね、だんだん怖くなる。君と会ってから起こった少しよかった出来事は、君がその前に死んでたらきっと起きなかった出来事なんだ。もちろんその逆だってあるかもしれない。君と出会わないから起きたいい出来事もあるかもしれない。でもそれは絶対起きるわけじゃない。だから、怖いんだよ。 君が死んだら、この世界はどう変わってしまうか怖いんだ。もちろん僕自身がどう変わってしまうかも怖いんだ」
『わたしはあなたと一緒にいていいの?』
「出来るならそうしてほしい。出来るなら」
『ありがとう』
「無理はよくない。ありがとう」