第1章 消えたのも 託された思い*
何があったのか分からなかった。
気づけば突き飛ばされ、爆音と共に衝撃波が身体に伝わる。
鼻孔をくすぐる鉄臭い臭いとガソリンの臭い。
手に伝う生暖かい何かを、私は知っている。
「よ…る…。詠流うぅぅぅっ!!!」
足元に横たわる詠流と、コンビニへと突っ込んだ車で全てがつながる。
「い、今救急車っ…。」
震える指で携帯をいじり、震える声で救急車を要請した。
「だ、いじょうぶ…。泣くなよ…、不細工だよ…。」
強がる詠流の声は、とても弱々しいものであり私を不安にさせる。
「ごめんね詠流…。今、救急車呼んだからっ。」
抑えようとするが、止まらない血液が地面を赤く染めていく。
救急車のサイレンの音が聞こえた気がした。
眼下を染める赤に、とらわれるかのごとく意識は闇へと呑み込まれていった。